今はインターネットで国内のものだけでなく「越境EC」という形で、海外の商品を個人で自由に購入できる時代になりました。そのため海外へ販売販路を広げるために、越境ECを選択肢の一つとして検討している事業者の方も多いのではないのでしょうか?今回はEC市場が成長を続けており、いわゆる「親日国」として知られている台湾向けに越境ECを検討している方に、始める前に知っておくべき事項や注意点などをわたしたちの実体験を元に解説したいと思います。
・事前に知っておきたい台湾越境ECのこと
・台湾での越境ECを始めるポイント
・台湾での越境ECの事例
事前に知っておきたい台湾越境ECのこと
台湾にAmazonはない?よく使われているECサイトと特長
台湾のEC市場の市場規模は、2018年は1,894億台湾ドル(約6,800億円)に対し、2020年は約3518億台湾ドル(約1.3兆円)まで上昇しているなど、2年近くで倍以上も成長している市場になります。
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日本ではトップクラスの利用者数を誇る「Amazon」ですが、台湾には進出していません。しかし日本のAmazonで注文した商品を台湾へ海外発送という形はできるため、その方法を中国語で解説したブログなどもインターネット上では目にします。あわせてシンガポール発のECサイトで台湾でも人気の「Shopee(蝦皮商城)」では日本の商品を代わりに購入して送ってもらう「代購」の人気も高く、多くの日本製品が出品されています。またモスバーガーやビオレ(花王)など日系企業もShopee内に公式サイトをオープンしています。また台湾EC市場の特徴として台湾では日本以上にコンビニが多く、共働き家庭も多いことからストレスなく受け取れるコンビニ受取やコンビニ支払を好む方も多くいらっしゃいます。台湾人に違和感のない決済方法や物流方法がきちんと対抗できるかどうかも必要です。
台湾での越境ECがおすすめされる理由
最も大きい理由としては、台湾でのEC利用率が高いという点があります。総務省の調査では日本におけるネットショッピングの世帯利用率は約55%ですが、一方台湾では約70%近くの消費者が普段からネットショッピングで食材や雑貨などを購入する習慣があるという調査結果が出ています。実際に台湾に住んでいると、何でもかんでもネットで購入でき、一つのブランドでも自社のECサイトだけでなく、大型モールとあわせて複数出店していることも多い印象を受けます。二つ目に台湾から日本への旅行者数も圧倒的に多く、台湾の人々が日本への興味関心が比較的高いというのも理由として挙げることができます。先日台湾の大手旅行代理店が「新型コロナウイルスワクチンの接種後に行きたい海外旅行先」という内容で調査を行ったところ、日本が43%で2位の中国(8.7%)と大差を付け1位となりました。また、台湾で販売されている商品に「日本産」と強調して販売するものも多く、日本から輸入された商品をあえて日本語を残したまま販売するケースも多くみられます。この理由について台湾人の同僚に話を聞いたところ「日本のもの=品質や信頼性が高い」というイメージが強く定着しているから、というのがあるようです。三つ目として、台湾にまず進出することで東南アジア進出まで狙いやすくなるという点です。東南アジアには中国語を母国語とする方々が多く住んでいる場所も多く、インドネシア・マレーシアなどもそのような国に当たります。そして中華系が最大の民族グループとされているシンガポールでは、人口のほぼ4分の3を締めており、文化や習慣なども中華圏の大きく影響を受けています。このような背景から、最初に台湾進出で様子を見てから、東南アジア進出を視野に入れるというケースが、台湾に進出している日系企業の戦略として多く見ることができます。
参考:家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(令和3年9月7日 総務省統計局)【網購消費者調查】52.9%消費者購物頻率虛實各半 實體零售網購崛起(產業情報研究所(MIC))コロナ後「日本」行きたい人、4割強で最多=旅行会社/台湾(フォーカス台湾)多民族社会のシンガポール(Visit Singapore 公式サイト)
しかし……一筋縄では行かない台湾での越境EC
台湾での越境ECは大きな魅力があるのは間違いありませんが、事実として海外からの越境ECはとても難易度が高いという現実もお知らせしなければなりません。一つは商品在庫を日本国内と台湾どちらに抱えるのか、物流拠点の問題です。自由にコントロールできる日本国内に在庫を抱えると、日本から台湾の送料が割高となってしまいますが、送料を安く抑えるために台湾に在庫を置くと、その分の賃料が発生するだけでなく、誰かに在庫管理を任せる形になります。そして高温多湿の台湾の気候に商品が最適な状態で保管ができるのかなども考える必要があります。二つ目は価格設定です。まず、台湾自体でその商品自体が需要があるのか事前のマーケットリサーチが必要です。それらを踏まえてから、商品単価の設定を行う必要があるだけでなく、前述した送料の問題なども絡む要素になります。特に現在ECサイトでは「送料無料」に設定しているところも多いため、お客様の中には送料の値段で購入判断をする人もいるなど、送料は厳しい目で見られるポイントです。三つ目として、海外に輸出する際には必要な関税や営業税、手続きが発生します。それだけでなく商品によって関税率は変わりますので、それらを総合して商品価格を算出する必要があります。あわせて台湾国内に商品を在庫して販売する場合は、法律や規制などの関係でそもそも販売できることが出来るのか、発送手続きや輸入手続で問題ないかどうかの確認も忘れないようにしましょう。このように越境ECならでは発生する壁を、複数乗り越えて始めて越境ECが実現します。ではこの壁をどう乗り越えたら良いのかを、実際に越境ECの運営経験があるカプセルの実体験を踏まえつつ、ご紹介します。
台湾での越境ECを始めるポイント
ステップ①:ECサイト・物流面・決済の利用サービスを決める
越境ECを行う上で、大きな課題は「言語・物流・決済」の3点です。まず在庫を日本国内で在庫を抱えるか、台湾で在庫を抱えるかで大きく戦略が異なってきます。初めて台湾で越境ECを行う場合は、最初は日本国内で在庫を置くことをおすすめします。その理由は、日本国内から売れた分だけ発送するという形を取ることで、台湾現地で在庫を抱える必要がないため、低リスクで越境ECを始めることができるからです。加えて、台湾に倉庫を置いて営業する際に必要な販売登録を行うなど手間もなくなります。このような背景から、越境ECを始める初期の場合には、コストも含めて低リスクで始めることができる一方で、送料が上乗せになる関係で商品単価が上がるというデメリットがあることも頭に入れておきましょう。しかしそのようなデメリットをカバーするために、台湾現地のクラウドファンディングサイトを活用して、商品と値段に納得したファンの方に購入してもらう方法も方法の一つです。そして販売を行うプラットフォームは、言語と決済の課題が一気に解決する「Shopify」をおすすめします。理由としては、大きな課題の「言語」「決済」を一気に解決できるという点です。「言語」に関しては、50の言語と130ヶ国以上の通貨に対応しています。すべてのShopifyのテンプレートが中国語に対応したわけではありませんが、台湾で使われている「繁体中国語」も対応しているテーマもあり、翻訳作業も日本語で入力した後に、翻訳したい言語に自動するため、手間がかかりません。
「通貨」に関しても、100種類以上の決済方法に対応しており、自動レートで現地の通貨に換算する設定になっているため、お客さんはストレスなく買い物が可能です。またサイトを運営していて追加したい機能もShopify内のアプリストアで気軽に機能を追加することができます。この機能を使うことでお客様はもちろんのこと、外部サイトの連携が簡単できることで、スタッフ自身もシームレスに運用できる体制が構築できます。多くの手間と時間がかかる「物流」に関しては、物流アウトソーシングサービスを提供している「オープンロジ」を利用しています。オープンロジが越境ECに対応しているという点だけでなく、Shopifyとアプリで自動連携しておくことで、注文が入れば面倒な通関手続や発送作業、在庫管理もすべてオープンロジが自動で対応してくれます。したがって、面倒な在庫管理などもシステム化することで、物流倉庫は日本でショップ担当者は台湾にいても全く不便を感じず、必要最小限の担当者で運用が実現しています。
ステップ②:集客方法を予め考えておく
ECサイトを単に開設しただけでは、お客様の目に止まらず、売上の見通しも立たないため非常に苦しい経営状態に陥ります。そのために、ECを始める初期段階から「どのような集客戦略を立てるか」をしっかりと考える必要があります。特に越境ECは、販売先で知名度がほぼない状態から始めることも多いため、しっかり長期的な戦略を練ることが重要です。台湾におけるECサイトのマーケティングはYouTubeやFacebook、そしてInstagramなどの各種SNSを駆使して行うのが主流です。そのため集客の間口を広げるための一つの方法として、YouTubeでタイアップを行い、各種SNSを活用して継続的に運用していく方法が一般的です。
ステップ③:カスタマーサポート体制をしっかり整えておく
海外から買い物をする越境ECだからこそ、お客様は些細なことであっても不安なりやすい環境であるということ認識しておく必要があります。そのため、利用ガイドや返品ポリシーなどはしっかりと準備を行うだけでなく、返品対応や問い合わせ対応など中国語対応が可能な人材を確保しておくことも重要です。また返品した商品を受け取る台湾現地の倉庫間と連絡がスムーズにいくように、そのため何かあったときにお客様が安心してもらえるサポート体制を念入りに構築しておきましょう。加えて、販売先のお客様がどのような施策を行えば販売促進に繋がるかを理解するのも越境ECを成功させる秘訣の一つです。例えば、台湾ならではの販売促進施策として「買一送一」という「一つ買ったら一つ貰える」というキャンペーンがあります。このキャンペーンはECサイトだけでなく、スーパーやデパート、飲食店まで台湾で生活していると普段からよく目にするやり方です。そして友人や家族などと共同購入することで少しお安く商品が手に入る「團購」や台湾ではまだまだ影響力の大きいFacebookによるキャンペーンなど、台湾ならではの戦略も多くあります。このように台湾人の生活と性格をよく理解した販売促進戦略を練るのも台湾で越境ECを成功させるポイントの一つといえるでしょう。
台湾での越境ECの事例
Cmer
わたしたちCAPSULEが運営している越境ECサイト「Cmer」は、クリエイターアイテムを販売するオンラインストアです 。「Cmer」ではクリエイターのこだわりがつまったオリジナルアイテムや、イベントアイテムなどをオンラインで購入可能で、加えてクリエイターのオリジナルブランドの立ち上げもサポートしています。カプセルにいるクリエイターは台湾だけでなく、日本を始め香港や東南アジアにまでファンを抱えるクリエイターが多いため、販売先は台湾だけでなく多岐にわたります。そのため、カプセルも「Shopify」を使ってプラットフォームを立ち上げ、台湾ドルだけでなくその他複数の国の通貨・配送に対応できるように運用を行っています。実際にCmerに販売された商品の一つに、登録者数270万人超えのYouTuber「阿神」がセルフプロデュースしたメガネを限定販売した事例があります。販売開始から、わずか5分で完売したこの商品の購入者は多岐にわたり、台湾だけでなく、その他の国からも多く注文が入り、クリエイターたちの影響力がいかに幅広いかを感じさせる出来事となりました。これ以外にもNFT作品を販売など、カプセルでは多くの越境ECの運用実績があることから、自社の越境ECサイトだけでなく、日系企業の越境EC支援なども行っています。
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アーネスト
新潟の燕三条に本社を置き、キッチン用品などを販売している「アーネスト」も台湾向け越境ECサイトを開設している会社です。越境ECサイト開設当初からSNSを活用したマーケティング戦略を行っており、日本好きの台湾人の支持を大きく集める日本在住台湾人YouTuber「阿倫」とのコラボレーションなどを度々行っています。その中の事例として、商品販売のクラウドファンディングの紹介を行ったところ、目標に対して多額の資金を獲得しており、クラウドファンディングを活用した越境ECなども積極的に行っています。
事例:話題商品のクラウドファンディングをPRし、驚異的な目標達成率を記録!
その他にもFacebookでは大人気料理系コミュニティ「灶神在家」とのコラボレーションを行うなど、台湾マーケットをしっかりと熟知し、獲得したいターゲットに向けた的確なマーケティング施策を行うことで、越境ECでの売上を伸ばし続けている良い事例といえるでしょう。
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ドモホルンリンクル
台湾の市場にあわせた決済方法を用意している日系サイトが、化粧品などを販売している「ドモホルンリンクル」です。発送は日本から生産されたものを台湾へ直接発送する方法をとっており、決済方法は台湾で主流であるコンビニ決済・コンビニ受取を採用。購入前の注意事項もイラストなどを含めて分かりやすく紹介。あまり越境ECに慣れていない方に対しても分かりやすく説明しています。商品そのものは決して安くはない価格帯ではありますが、「日本からの商品が直接届く」というスペシャル感と、普段使い慣れた方法で利用できるという便利さのバランスが絶妙に取れた越境ECとなっています。
まとめ
自由に渡航できない時代でも海外へ販路を見いだすことができる越境EC。越境ECを成功させるためには、事前の準備と、現地を熟知したマーケティング戦略が非常に重要になってきます。「越境ECを開設したいが、どこから着手すべきか分からない」という方に対してカプセルでは越境EC運営の代行事業も行っています。バイリンガル人材が多く揃ったカプセルでは言語の壁はもちろんのこと、日本と台湾どちらの現地事情にも精通した人材がサイト制作から販売、売れ筋商品の見極めやマーケティングまで一貫して対応しますので、台湾向けに越境ECへの挑戦をお考えの方は、是非一度ご連絡ください。・越境ECページ・台湾向け越境ECのご相談・お問い合わせ