海外に進出するうえで、その国のことについて知り、現地の人たちの働き方などをきちんと理解することは非常に大切なことです。日本と距離が近く、どこか似ているところが多い台湾ですが、実際に台湾で暮らしてみると、わたしたち日本人が知らないこと、驚くことがたくさんあります...。この記事では、台湾に進出を考えられている日本企業の方たちに向けて、各種データやわたくし個人の実体験も交えながら、下記の内容をお伝えできればと思います。・一目でわかる!台湾の基本情報
・台湾のビジネスデータと台湾人の働き方
・日本人とはすこし違う?台湾人の働き方について
一目でわかる!台湾の基本情報
台湾の基本データ
このなかで、日本人の方がよく誤解されるのは「言語」についてです。台湾で使われている中国語は、日本で「台湾華語」とも表現されることが多く、漢字は筆画の多い「繁体字」が使われています。中国で使われる簡体字とは異なりますが、日本の漢字と共通点も多く、日本人には比較的馴染みがある漢字です。また「台語(タイユ)」といわれる台湾語も、よく耳にします。面白いのは、中国語での会話のなかに、自然と台湾語の単語が混じっている場面があるときです。わたし自身、現在中国語を勉強中なので、若い世代のスタッフで台湾語を話せるスタッフが多くいるので、ときどき教えてもらいます。
参考:台湾政府經濟部統計處 統計指標簡易查詢 :外務省 台湾(Taiwan) 基礎データ :帝国書院:統計資料 日本 面積・人口 人口密度
台湾の主要産業について
台湾の主要産業は製造業です。近年、台湾政府はハイテク産業に力を入れており、台北から1時間半ほど離れた新竹市に、サイエンスパーク(新竹科学工業園区)を整備しました。そのまわりに理工系の有名大学や研究機関が集まっており、優秀な人材があつまる「台湾版シリコンバレー」としても有名な場所です。後ほど紹介する「TSMC」も、この新竹市に拠点を置いています。貿易についても2020年の1月から4月のデータを見ると、輸出が輸入を上回っています。輸出品目に関しても、電子電気機械などが主な品目になります。また、アメリカのApple社が台北郊外の桃園市に、新工場を新設する方針であることも報道されており、蔡総統も5月20日に行われた二期目にあたる就任式典でも、情報、デジタル関連産業を重点戦略産業のひとつとして挙げるなど、今後も発展が期待されています。
参考:台湾政府經濟部統計處 統計指標簡易查詢 :蘋果擴大投資台灣 龍潭科學園區建新廠 :外務省 台湾基礎データ
台湾のビジネスデータと台湾人の働き方
東京から約3時間半で到着する台湾。わたし自身、台湾へなんどか旅行へ来たことがありましたが、実際に台湾に住み、仕事をするとなると新たな発見がたくさんあります。ここでは、台湾に進出している日本企業と、台湾を代表する有名企業をピックアップし、実際に体験して驚いた台湾人の働き方などを、わたくし個人の目線で、お伝えいたします。
台湾に進出している日本企業
台湾には本当にたくさんの日本企業が進出しております。とくに台北は、日本食が食べたくなったり、日本製品を購入したりするときも、すぐに手に入るので、私たち台湾に住む日本人もとても助かっています(いつもありがとうございます!)。ここにあげている日本企業は、ほんの一部です。とくに日系の飲食店は、休日多くの人が列を作り、店内のBGMはすべて日本語が流れていたりするので、日本にいるのかと錯覚することもしばしば。ある台湾人スタッフによると、日本のある整腸薬がとても人気だとのこと。理由は、日本製ということで信頼が高く、外食が多い台湾の人々は体を気遣うために飲んでいる人も多いということでした。また、台湾人スタッフと話していて、「それって日本のものなの?」と驚いていたのも印象的でしたが、それだけ台湾でのマーケティングが成功し、日本企業や日本の製品が生活に浸透しているということなのだと思います。
台湾を代表する有名企業
①ASUS(華碩電腦股份有限公司)
台湾政府の経済部が調査している「台湾の有名ブランドランキング」7年連続で1位を獲得した、パソコンや周辺機器を製造するメーカー。日本でも家電量販店などで多くの人が目にしたことがある企業かと思います。
②鴻海鴻海科技集團
こちら「ホンハイ」と書くと、ピンとくる方もいらっしゃるのでないでしょうか。2016年にシャープを買収し、傘下に置いたことで大変話題になった台湾を代表する有名企業です。台湾の新卒の人たちに大変人気のある企業のひとつです。
③TSMC(台灣積體電路製造)
こちらも台湾の就職先として人気の、半導体製造ファウンドリです。台湾では「台積」ともよばれ、アップルなどを取引先としており、2014年には世界の半導体製造ファウンドリシェアの半分を越え、現在も世界の業界シェアトップを維持している、現在大躍進を遂げている企業です。
④統一企業股份有限公司
台湾の食品製造・食品加工・流通・小売などを運営する大手グループ企業。セブンイレブンやスターバックスコーヒー、ミスタードーナツなど、日本でもお馴染みの企業の経営権を台湾でも所有している会社です。さらに、野球チームまで所有しており、台湾で暮らす人々の生活に深く根付いている企業です。
⑤Gogoro(睿能創意股份有限公司)
2011年に設立された会社で、台湾で最も勢いがあるといっても過言ではないベンチャー企業です。Gogoroのメインサービスは、電動バイクの販売。多くの台湾人にとってバイクは生活になくてはならない必需品です。2015年に発売されてから、その機能性とスタイリッシュな見た目から、若者を中心に人気が爆発。街中に設置されたGoStationのバッテリー交換ステーションでバッテリーの交換が可能で、料金は月額払いを採用しています。また、成功の理由として、オシャレな見た目と乗りやすさに加えて、将来的にすべての乗り物の電動化を計画している台湾政府が、Gogoroのような電動バイク購入に対して補助金を出していることから、少しお得に購入できる、という点も若者からの指示を集める理由にもなっているようです。現在、Gogoroのレンタルバイク事業「Go share」のサービスを開始。専用のスマートフォンアプリから予約と返却ができるシステム。実はこのサービス、すでに日本では石垣島にて運用開始されています。
参考:《經濟》2019年台灣20大國際品牌揭曉,華碩7連霸 : 2020年第1四半期の半導体ファウンドリランキング予測 - TSMCが圧倒的存在感 : 環保署澄清2030年淘汰全部燃油車錯誤說法 : gogogo台灣 : e-SHARE 石垣
日本人とはすこし違う?台湾人の働き方について
①朝ごはんは会社で!?家ではなく、学校や会社で食べる人も
多くの日本人が驚く光景かとおもいますが、最初の基本データにある通り、共働きが多い台湾。小さい頃から外で朝ごはんを食べる習慣がある人が多いのも、特色のひとつです。勤務開始時間が過ぎたあとでも、台湾風おにぎりの飯糰やサンドイッチなどの朝ごはんを食べながらメールチェックする光景も。
②圧倒的にスーツの人が少ない!年中クールビズな台湾のオフィス事情
日本はITや広告系などの一部の業種を除いて、男性は仕事時にスーツを着て出勤する風景が日常かと思います。しかし、台湾の街を見渡すと、圧倒的にスーツを着ている男性が少ないな、と感じます。台湾でも銀行や保険、一部の営業マンについてはスーツを着るようですが、元営業マンの社員に聞いても、「大事なお客さんのところに行くときだけ、ときどきジャケットを着るぐらいだった。それでもシャツにネクタイだけだったかも」と、日本に比べても少ないようです。なお、女性もときどきノーメイクで通勤されている方を、地下鉄のなかでよく目にします。もともと、台湾の女性のお化粧は、日本人よりナチュラルな印象です。そして、台湾人女性はお肌が綺麗な方が多い…!本当に羨ましい限りです。
③大型台風が襲来!政府の判断で、学校も企業も「台風休み」に
亜熱帯気候に位置する台湾の夏は、台風シーズンです。台風が接近し、各市町村が危険だと判断した場合、政府から出勤・通学停止を宣言します。この宣言は義務ではありませんが、多くの企業がお休みになります。また、労働部でこの宣言が出た場合、に出勤させた企業に対して、特別手当等の支給を行うよう推奨しています。だいたい夜の10時ごろにこの宣言が発令されることから、台風が近づくと、どこかソワソワしだすのも台湾ならではの風景でしょうか。
④内定後に軍隊!?日本とは違う台湾の就活事情
台湾の大学生は、日本と違って卒業の1ヶ月前である5月あたりから就職活動をスタートさせます。ビジネス学科の学生は、大学3年生の夏休みに2ヶ月程度インターンの経験を積む学生が多く、カプセルにも多くのインターンの学生がスタッフとして活躍しています。また、現在も台湾は男性に対して、4ヶ月の兵役義務を課しています。そのため、多くの男性は大学卒業までにその義務を終えて就職します。なかには、毎年の夏休みに2ヶ月ずつ分けて兵役に行く学生もいるようですが、就職先が決まり、大学を卒業したあとに、兵役に行く人も少なくないとか。兵役制度のない日本人からすると、「内定出したのに兵役に行っちゃうの?」と驚くことがあるかもしれませんが、そこは配慮が必要かもしれません。