いまや世界中で驚異的に広がった新型コロナウイルス。世界で一番最初に感染が広がった中国では、ピーク時に約2万人を超える新規感染者が確認されました。
カプセルも、中国で最大の経済都市である上海に支社を設けています。2020年5月25日時点の上海の状況は、新規感染者数は0人に抑まり、徐々に収束へ向かっています。
今回は、現地上海オフィスで勤務しているマーケティングマネージャーに、現在の中国や上海の様子について話を聞きました。
この記事では、日本から中国に進出されている、もしくは今後進出されようとしている日本企業の方たちに向けて、下記の内容をお伝えできればと思います。
・コロナ収束に向かう中国。現在政府が行う対策とは
・コロナで変わった中国の生活と消費者行動
・中国のコロナで変わったビジネスの流れと今後
コロナ収束に向かう中国。政府が行った対策
まずは現時点での中国の状況や、コロナ収束に向けてどういった動きになっているか、わかりやすくお伝えします。
新型コロナウイルスで最初の大きな感染地域となった中国ですが、5月22日ついに、中国全土での新たな感染者が0人となりました。新たな感染者も海外から帰国した人が主な数を占め、現在平常を取り戻そうと動き出しています。
①段階的に学校が再開。映画館やカラオケなども再開予定
新型コロナウイルスの影響で休校が続いていた学校は、4月下旬より徐々に各地域で再開されています。上海の日本人学校は、5月25日に学校が再開。
北京市では、6月1日から学年別に小学校が再開されました。本格的な学校再開に向けて、教室内ではマスク着用を義務付けるなど、学校へ送り出す保護者への教育も合わせて行っていくとのことです。
また、昆明・貴州・広州などの都市でも、各省政府から防疫措置を取ることを義務付け、映画館やカラオケ、博物館、ジムなど、室内での娯楽施設も営業再開の動きが出てきています。
②国際便も再開の動き。コンテナ型ウイルス検査室の設置も
5月29日時点で、中国各国を結ぶ定期航空便は、各航空会社につき各国1路線、週1回の往復までに限定されています。5月25日に、中国政府の国土交通省にあたる部署直下の中国民用航空局が、経済活動の再開に向けて、不定期の国際チャーター旅客便の運航を承認する内容が発表されました。
それに先駆け、上海浦東国際空港では、PCR検査用のコンテナ型ウイルス検査室の運用を開始し、24時間体制で検体採取が可能となりました。「国際便の全面開放を意味するものではない」とのことですが、徐々に再開に向けて、一歩ずつ動きはじめています。
参考:操業再開に向けた国際チャーター旅客便の承認が進む (中国)
中国コロナ収束に向けて変わった生活と消費者行動
①中国国内で移動が大幅減。上海の人口も減少
コロナの影響で、人々の移動が大きく減ったことが中国で話題となりました。中国全土で、2020年の旧正月後の移動量が、前年度の同時期より38%減り、また北京や上海などの一級都市から、郊外の二級都市間への移動も36%減少しました。これは、旧正月で実家に帰省したあと、大都市に戻る人が大幅に減ったことを表しています。
上海もこの影響を大きく受け、旧正月後の上海からの人口流入数が昨年度の7,415人と比べて、2020年には4,306人までと大幅に下がりました。実際に上海オフィスのスタッフの中にも、上海をすでに離れた人がいるということで、理由について聞いてみたところ、「仕事がなくなった影響で収入源がなくなり、物価や家賃が高い上海を離れたのでは」とのことでした。
この現象は「一時的ではないか」という予想も出ていますが、人口構成が変わることで経済循環が変わることも考えられるでしょう。
参考: 特别研报|从一二线流动人口返城情况,看城市经济复建预期
②これまでと違う市民の意識。変わる上海の人たちの行動
上海オフィスのスタッフによると、コロナの影響により上海の人々の衛生意識も、大きく変わってきている兆しがあるとのことでした。
いちばん印象的だった出来事として、これまで上海では、道端でツバを吐く人を見かけることがよくあり、近くを歩いている人たちは、いままでとくに気に留めていなかった人も多かったそうです。しかし、最近はツバを吐いた人を見つけると、近くを歩いている人たちが一瞬にして離れていった瞬間を目にしたとのこと。
また、そのような場面に遭遇したほかの通行人と、喧嘩になるときもあるそうで、多くの人がマスクをして街を出歩くなど警戒心を持っている人が多いなか、上海の街中で見かけた出来事として、印象的だったようです。
あわせて、この春に偶然引っ越しが重なったこともあり、部屋探しにとても苦労したと話していました。いままでは日本と同様、部屋探しの際に内覧が可能でしたが、コロナ発生後は、住民でないと建物内に入れなくなってしまったこともあり、ビデオ通話で部屋を閲覧をするという経験が新鮮だったようです。
上海市内の家賃についても、新型コロナウイルスの感染のピークだった2〜3月は大きく下落。現在は回復傾向にあるものの、まだ以前の状態には戻ってはいないとのことでした。
ただ、今回コロナの影響にいち早く対応し、市民の意識や生活が変化し、さまざまなことがオンライン化するなど、今後中国から新しく生まれるサービスも出てくるでしょう。
中国コロナ収束に向けて変わったビジネスの流れと今後
日本や台湾と比べ、長期間にわたって移動が制限された中国。自宅での時間が増えるなか、ライブ配信がこれまで以上に人気を博し、現在は巣篭もりの反動からか、すでに国内旅行が盛況となっています。
①ライブ配信販売に新しい業種が参画。売り上げも拡大
中国のインターネット販売といえば、ライブ販売が特徴のひとつ。アリババから運営する中国の大手ECサイト「タオバオ(淘宝)」での実施が、とくに人気を博しています。コロナの影響から、タオバオで新たに宣伝する企業が1月〜2月のあいだで、719%増加という驚きの数字を叩き出しています。
今回コロナウイルスで売り上げが落ち込むなか、政府も消費者を動かそうと、タオバオで農村部の農家でライブ配信を実施。もともと中国政府は農産業に力を入れはじめていたという背景もあり、今後は20万人以上の農家を対象に、同様の施策を行っていく予定です。
今回のコロナの影響で、これまでライブ配信を実施してこなかった業種が参入したのも特徴のひとつ。これまで参入してこなかった業種として「住宅業界・自動車業界・ジム・博物館・観光地」までもがライブ配信に参入。実際に、今回新たに参入した内装業者は、先月に比べて約16倍もの売り上げを達成するなど、今回を機に大きく売り上げを伸ばしました。
また、このライブ放送にこれまで出演してこなかった有名人を招き、消費を促す動きもありました。各地の市長自ら、その地域ならではの特産品をアピールした例も話題を呼びました。
参考:中国农民上网“买买买”,引起了世界银行的注意!中国农村电商市场到底有多大?
②すでに国内旅行が盛況。旅行業界は下半期は回復の予想
日本同様、中国でもコロナの影響で飲食店やホテル業界、旅行業界は大打撃を受け、経営難を迎える企業も少なくありません。ですが、5月上旬の中国の連休では「近距離の旅行をした人が多かった」という統計が出ました。
実際に旅行サイトの統計を見ると、省内の旅行が多く、安全の観点からも自分たちの住んでいる都市部からすこし離れた郊外の予約が盛況だったそうです。
あわせて、ある民泊のサイトでは、宿泊前5日以内に予約した人が、全体の95%を締めたという結果が出ました。理由としては、下記のようなことが考えられます。
・連休前に「突発的に旅行に行きたい」と思い立ったとき、すぐに予約した人が多かった
・コロナの影響で予約しているホテルがキャンセルになる事態が相次いだこともあり、ギリギリで予約した人が多かった
また、そのなかでも、高級ホテルが盛り返しているのが特徴的です。5月の連休時には、高級ホテルの予約が売り切れるという現象が起こりました。同時期の全体のホテル予約数は、五つ星ホテルが半分を占めたという結果も出ています。
こちらの理由としては、多くの人がコロナの影響で家から出られなかったため、これまで中国で主流だった団体旅行よりも、家族など身近な人だけで、リラックスできる品質の高い旅行が人気になったと思われます。
この傾向から、中国では旅行会社が、下半期の旅行業界の回復を見込んで大型投資をしたことが話題となりました。あわせて、民泊を運営している会社も、直近の旅行の需要に備えて「すでに新しい物件を購入している」という動きもあります。
まとめ
現在日本の報道では、中国の現状があまり報道されていないこともあり、弊社に現在の中国の状況をお伺いされる機会も増えてきましたため、今回このような記事を執筆しました。
このように、現地にスタッフがいることで現地の最新情報を交えながら、クロスボーダーでお客様へ最適のご提案できることがカプセルの特色です。
ここには掲載できなかった現地情報も多数ございますので、中国の最新情報や、中国市場やプロモーション、マーケティングなどに関することなら、お気軽にご相談ください。